2016年11月3日木曜日

筋肉をつけるための食事

こんにちは

理学療法士のSAKURAです。

現在、通所介護事業所で機能訓練指導員として務めていますが、そこでよく聞かれるのが

「筋肉をつけたい」ということです。

「筋力」をつけたいという意味で「筋肉」と言っている利用者さんもいますし、やせ細った体を自分で見たときに情けなくなった経験から「筋肉」をつけたいと言っている利用者さんもいます。

男性・女性どちらも、「筋肉」をつけたいと希望される方が多いので、運動・トレーニングは提供できますが、食事面での「たんぱく質」の摂取が無いと、なかなか結果に結びつきません。

そこで、今回は「筋肉をつけるための食事」を調べてみました。


食事の必要性

トレーニング中は、多少なりとも筋肉が分解されることは避けられません。
そして、トレーニングを止めると、より分解速度が早まり、また同時に筋肉の合成も始まります。
そのため、トレーニングで損傷した筋肉を回復したり成長させるためには、適切な栄養の補給が欠かせないのです。

トレーニングの成果を出すためには、筋肉合成が筋肉分解を上回る必要があるため、筋肉合成を速やかに進めるための栄養補給、つまりトレーニング後の食事が重要カギとなります。



トレーニング後に必要な栄養素

トレーニング後には、筋肉の成長に必要なインスリンの分泌を急速に増やす作用がある「炭水化物」、そして筋肉を作るのに欠かせない「たんぱく質」を含んだ食事をする必要があります。

ちなみに、トレーニングでエネルギーを消費した後は脂肪を蓄えにくいので、炭水化物をしっかり摂っても大丈夫です。

たんぱく質、炭水化物の他にも、ビタミンやミネラルなどの栄養のバランスの良い食事を摂るようにすることが大切です。

たんぱく質の分解やエネルギー代謝に必要なビタミンB1やビタミンB2。
コラーゲンの生成を促して筋肉や血、骨などを生成する働きに関わるビタミンC。
これらの栄養素は特に不足しないように注意し、栄養の偏らない食事をするようにしましょう。

基本的には同じ食材ばかりを食べるのではなく、多くの食材を使ったバリエーション豊かな料理を、毎日メニューを変えて食べるようにするといいでしょう。


食事のタイミング

トレーニング後、30分以内にたんぱく質と炭水化物を含んだ食事を摂るのが理想的です。
トレーニング直後の30分は、筋肉を成長させる大きなチャンス。

特に、たんぱく質の豊富な食品を使った料理か、筋肉の分解を抑えて筋肉の合成を促すプロテインは必ず摂取するようにしましょう。
これにより、筋肉を成長させる効果を最大限に発揮し、トレーニングの成果を出しやすくすることができます。


たんぱく質を多く含む肉類


牛ヒレ肉(輸入牛) 133kcal/100g タンパク質 21.3g

筋肉を回復させたり、タンパク質の合成に役立つ亜鉛も多く含まれる食品です。
ただし、和牛は脂質が輸入牛の3倍以上になるケースもあり、その場合カロリーが2倍程度に膨れ上がることもあるので、ダイエット中の摂取には気を付けるようにしましょう。

豚ヒレ肉 115kcal/100g タンパク質 22.8g

肉類の中でも特に多くのビタミンB1を含む食品です。ビタミンB1は糖質を素早くエネルギーに変える働きをし、また疲労回復の効果もあります。脂質も非常に少ないため、ダイエットが気になる時も気にせず食べられます。

豚もも肉 183kcal/100g タンパク質 20.5g

豚ヒレ肉と同様にビタミンB1が多い食品です。
ただし、脂肪がやや多くカロリーも高めなので、ダイエット中の摂取は控えめにしておいた方が良いかもしれません。

鶏むね肉(皮を除く) 108kcal/100g タンパク質 22.3g

安価でタンパク質たっぷり、特にお手軽なオススメ食品です。
ビタミンB6が多く含まれているので、タンパク質の代謝や脂質の代謝を助け、筋力を発達させたり脂肪燃焼を促してくれる効果も期待できる優秀な食品です。
ただし、皮の部分には脂質が多くそのままだとカロリーが高いので、必ず皮を取り除いてから食べるようにしましょう。

鶏ささみ 105kcal/100g タンパク質 23g

ダイエット向きの食品としてよく知られる鶏のささみ。
実は皮を取り除いた鶏むね肉とカロリーはほぼ一緒です。
鶏むね肉よりかなり多い量のビタミンB6が含まれる他、疲労回復に効果のがあるナイアシンも多く含まれます。
 
たんぱく質を多く含む魚介類
 
 

サバ 203kcal/100g タンパク質 20.8g

安価で栄養豊富なサバ。
入手や調理が難しい場合はサバ缶でも問題ありません。
サバには不飽和脂肪酸が多く含まれているので、血中コレステロールや中性脂肪を減らしたり、血流を良くしたりする効果があります。
動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞の予防にもなるので、積極的に摂取したい食品です。
 

サケ 133kcal/100 タンパク質 22.3g

安価でタンパク質を多く含み、不飽和脂肪酸も豊富に含まれます。
骨や歯を丈夫にしたり、糖尿病予防、免疫力の向上など、健康増進や生活習慣病予防にも役立つ食品です。
 

タラ 77kcal/100g タンパク質 17.6g

魚の中でもダントツに低カロリーなタラは、ダイエット中には特にオススメです。
 

マグロ(赤身) 125kcal/100g タンパク質 26.5g

高タンパクで、筋トレ後の食事にピッタリな食品です。
ナイアシン、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12が多く含まれるので、脂肪燃焼や筋肉の発達、疲労回復、生活習慣病予防など、さまざまな健康効果が期待できます。

エビ 82kcal/100g タンパク質 18.4g

低カロリーで高タンパクなエビは、ダイエット中にオススメの食品です。
ただし、エビフライなど調理方法によってはカロリーが跳ね上がるので、蒸したものなどを食べるようにしましょう。
 
 

ダイエットしながらボディを引き締めたい場合

筋肉を鍛えて体を引き締めつつダイエットしたい場合は、高タンパクで低カロリーなメニューをチョイスしましょう。
①和食
焼き魚、煮魚、刺し身、牛ヒレ肉の焼き肉、豚もも肉の生姜焼きなど。

②洋食
鶏もも肉のステーキ、リゾット、ハムサンドなど。

③中華
中華料理は高カロリーなものが多いので、ダイエット中は要注意です。量を減らしたり、チンジャオロースや八宝菜、麻婆茄子などの野菜メインのメニューを選びましょう。エビチリなども低カロリーです。

ジムでトレーニングをした後や、作るのが面倒な時は外食することもありますよね。そんなときも、目的に合わせたメニューをチョイスすれば、トレーニングをムダにすることがありませんね。

2016年11月2日水曜日

感染症予防のために免疫力を上げる食品

こんにちは
理学療法士のSAKURAです。

先日、インフルエンザの予防接種に行ってまいりました。
これからの時期は感染症に注意をしなくてはなりませんが、高齢者の方々も予防接種を予定されている方は多かったです。

今回、感染しても重症化しないように、あわよくば罹らないように、栄養で免疫力を上げることが出来ないかと調べてみました。

高齢者の方々や小さなお子様も、免疫力が少ないと感染症に罹りやすいので、是非試してみてください。



ウイルスや病原菌が体内にはいってきても、必ずしも病気になるとは限りません。それは、体内にある白血球、マクロファージ、NK細胞が協力し合って異物をやっつけ、感染するのを防いでくれるからです。
                        
だから、免疫力を高めるには、白血球などの細胞がいつも元気に働けるよう、細胞の酸化(老化)を防ぐことが大事。



大根

 

抗酸化食品はいろいろありますが、これからの季節なら大根がイチ押しです。辛み成分であるイソシアシアネイトに抗酸化の働きがあり、皮との間に多く含まれているので、よく洗って皮ごと食べるのが○。
また、大根はジアスターゼなどの消化酵素も豊富。食べたものを速やかに消化し、効率よく吸収する助けをし、効率よく吸収する助けをし、代謝のアップにも役立ちます。
ただし、これらの成分は熱に弱いので、『大根おろし』がおすすめメニュー。ほうれん草やトマトを加えると、抗酸化力がトリプルになり、さらに強力!




長いも

 

長いものヌメリに含まれるムチンは、たんぱく質の分解を助ける成分。たんぱく質は細胞の材料となる栄養素なので、免疫力を高めるためには、毎日きちんと補給する必要があります。

長いもは、そのほかにも多くの消化酵素を含み、食べ物の消化吸収をよくし、新陳代謝を上げるので、昔から“精がつく食べ物”といわれてきました。
最近では、抗酸化成分を含むこともわかっています。

こういった長いもの成分を100%生かすには、すりおろさないことが大事。
『長いものせん切り』は昔からある定番メニューですが、良質のたんぱく質を含む鶏肉を混ぜれば、免疫力はさらにアップ。
抗酸化成分を含むのりを散らし、同じく抗酸化の働きがあるわさびを混ぜて、風味よく、ピリリと辛くするのもおいしいもの。お酒の肴にもピッタリです。



鶏肉

 

鶏肉はもとよりたんぱく質が豊富で、しかも低脂肪という優れた食品です。
さらに最近、アミノ酸の一種であるカルノシンアンセリン抗酸化抗力があることがわかり、これらを含む鶏肉はますます注目株。
たんぱく質を効率よく利用するために、たんぱく質の代謝をよくするビタミンB2と合わせて食べましょう。
たとえば、中華の『鶏のカシューナッツ炒め』はナッツにビタミンB2が豊富なのでおすすめ。同じくビタミンB2が多いきのことの炒めものは、家でも簡単につくれるメニューです。




ヨーグルト



よく「腸内環境」という言葉が使われますが、免疫力を高めるためにも、善玉菌であるビフィズス菌を増やし、腸内環境を整えることが必要です。それによって、消化吸収をよくし、基礎体力をアップさせることができます。

ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内でビフィズス菌を増やす働きをし、便秘の解消にも役立ちます。ヨーグルトにはカルシウムやたんぱく質なども豊富なので、毎日積極的にとりたいもの。

バナナを加えると食物繊維がプラスされて整腸作用が強まり、りんごを加えると抗酸化作用が加わって、よりヘルシーに!




小松菜


冬になると青々としてくる小松菜は、緑色の成分であるクロロフィルビタミンA・C・Eを含む、強力な抗酸化食品です。
そのうえカルシウム鉄分などのミネラルも豊富なので、免疫力アップのためだけでなく、骨粗鬆症や貧血が気になる女性には、とくに積極的にとることをおすすめします。


小松菜は、ほうれん草のようにアクがないので、下ゆでしたり、水にさらしたりする必要なし。サッと炒めるだけで食べられます。

免疫力を高めるためには、良質のたんぱく質を含む、卵や鶏肉などと組み合わせるのがベター。油を使うことで、ビタミンA(カロチン)の吸収もよくなります。


小松菜を粗みじん切りにしてご飯と炒め、溶き卵を混ぜて、塩、こしょうで調味する『小松菜のチャーハン』や『小松菜と卵の炒めもの』も手軽にできるおいしいメニューです。




納豆



納豆などの大豆製品には、イソフラボンという、胃がんを予防する成分が含まれており、これが強い抗酸化力をもっています。体内にはいると、女性ホルモンに似た働きをし、代謝をよくする効果もあります。
また、納豆にはビタミンK2も含まれており、カルシウムが骨に沈着するのを助け、骨を丈夫にします。骨を健康的に維持することで、基礎体力がアップします。


納豆は手軽なうえ、植物性たんぱく質も豊富。免疫力アップのためには、毎日でもとりたい食品。よくかき混ぜて、ネバネバにして食べましょう。

もともと消化のいい食品ですが、たんぱく質の消化吸収を助ける長いもと組み合わせるとさらにベター。ともにネバネバ同士で、味の相性もピッタリです。





梅干



梅干しは昔から薬効の多い食品として知られていますが、有効成分の1つがクエン酸。代謝をよくすることで疲労を予防・解消し、元気な体を維持します。

もう1つの有効成分は、梅干しを焼くことで生まれる特効成分。まだ詳しいことはわかっていませんが、これには強力な抗酸化作用があり、免疫力をアップすること間違いなし。


梅干しをアルミ箔に包み、オーブントースターで、ちょっと焦げ目がつく程度に焼きましょう。そのまま食べてもおいしいですが、お茶に入れて飲むと、お茶に含まれるビタミンもとれて、さらに効果大。
疲れているときの疲労回復にも役立つので、毎日の習慣にするとGOOD!




ニラ


免疫力を高めるには、体内にはいった栄養素が、エネルギーとして効率よく燃える必要があります。
エネルギーの素である、糖質の代謝に不可欠な栄養素はビタミンB1。そのビタミンの働きを助けるのが、にらに含まれている、硫化アリルという成分。


だから、「硫化アリル+ビタミンB1+糖質」の組み合わせがベスト。
ビタミンA・C・Eの抗酸化力も免疫力を高めます。
外食なら『にらレバ定食』がイチ押し。家でつくるなら、にらを卵でとじた『にら卵』にご飯をつけましょう。『にらと豚肉の炒めもの』+ご飯もおすすめ。




にんにく


にんにく特有の匂いも、硫化アリルが含まれています。硫化アリルは加熱しないほうが、より強力に作用するので、『にんにくのしょうゆ漬け』をつくりおいてはいかが。にんにくをしょうゆに漬けて、1週間から10日置くだけ。にんにくの臭みが消えるので、生でもおいしく食べられます。

これをスライスして、サラダやカレーの仕上げに入れたり、使い方は自由自在。

豚肉など、ビタミンB1を含んだ素材と合わせるとベター。
しょうゆのほうも、つけダレに使えます。
 

2016年10月31日月曜日

こむら返りの対処法・予防法方

こんにちは


通所介護で機能訓練指導員をしています。理学療法士のSAKURAです。

朝晩の冷え込みが厳しくなってきて、利用者から「夜中に、こむら返りになった。」と言われることも多くなりました。

夜間、もしくは朝方にこむら返りになる高齢者は結構多いように感じます。

寒くなってきたこの時期から、だんだんとこむら返りになる高齢者も増えてきていますので、原因と対処法、予防法方を考えました。


こむら返り腓返り、こむらがえり)とは、「腓(こむら)=ふくらはぎ」に起こる筋痙攣の総称で、「(足が)攣(つ)る」とも言われる。特に腓腹筋(ふくらはぎ)に起こりやすいため、腓腹筋痙攣と同義とみなすこともある。他にも指・首・肩などもこの症状と類似した状態になる場合がある。


原因
①疲労

筋肉内に疲労物質である乳酸が一定以上蓄積されると、筋痙攣を起こします。
筋肉内へのエネルギー供給が間に合わなくなり、代わりに疲労物質が蓄積されていきます。
激しい運動や水泳などで足が攣るのは、疲労による筋痙攣が考えられます。


②栄養(主にミネラル)不足

カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、カリウムといったミネラル分や、ビタミンB1やタウリンといった栄養素が不足していると、筋肉や神経が興奮しやすくなったり、疲労しやすくなったりするため、足が攣ることが多くなります。
体内のナトリウムイオンやカリウムイオンなどの電解質のバランスが崩れて、筋肉の異常収縮や痙攣を引き起こすと言われています。



対処法

こむら返りが起きた場合は、ふくらはぎにある下腿三頭筋(主に腓腹筋)が収縮している状態です。
ですので、腓腹筋を伸張させれば、痛みは軽減されます。

腓腹筋が伸びる姿勢は、膝を曲げず(膝関節伸展位)に つま先を上に持ち上げた(足関節背屈位)です。





足の指を反らすことで、足底腱膜から足の後面にかけて伸ばすことが出来るので、痛みが軽減しやすいです。


ただ、このように説明しても 「痛くて動けないからそんなこと出来ない」 と言われることがほとんどです(汗)


寝ているときは、膝を伸ばしてつま先が下を向いている(底屈)状態で腓返りが起こりやすいので、
お勧めの対処法は、 " 曲げて(膝関節屈曲)から、つま先を上に反らす(足関節背屈) " です。

膝を曲げると足の後面の筋膜も緩みます。ですので、つま先を反らしやすくなります。

こむら返りの痛みを軽減させるには、つま先を反らすことが重要です。つま先を反らしやすくするために、膝を曲げてみてください。

痛くて動けないと思いますが、ここは我慢して膝を曲げてください。


あと、寝ている向きを変えて、 " 足を壁に着ける " という方法もあるみたいですね。

つま先を上にして、足の裏を壁に沿わせると、つま先が上を向く状態を作れます。

痛くても我慢して、方向転換できる方はこちらでも良いかと思います。



予防法


まずは疲労がたまらないように、ストレッチやマッサージをして血液の循環をよくすること。

ミネラル不足とならないように、水分補給をこまめに行うこと。


これからの時期、涼しくなると喉の渇きが感じにくくなります。夏場と比べると水分の摂取量も少なくなると思いますので、夏場と同じくらい水分は摂取してください。
夜間のトイレに目覚めるのを嫌って、水分摂取をためらう方も多いと思いますが、しっかりと水分を摂ってください。

あと、これから寒くなってくると体も冷えやすくなります。「頭寒足熱」ではないですが、足元が冷えると血液の循環も悪くなり、こむら返りも起こりやすくなります。湯たんぽ的なもので足元を温めるようにしてください。


病院に受診すると、漢方薬の「芍薬甘草湯」を処方される方も多いと思います。
(ツムラの68番で覚えている患者さんもたくさんいました)

芍薬甘草湯でかなりの方が改善するので、こむら返りで悩まれている方は、受診して医師に相談してみてください。

高齢者の転倒 原因と予防(1)

こんにちは

通所介護で機能訓練指導員をしていますSAKURAです。


先日、私が理学療法士であるということで、「転倒予防教室」なるものを地域の高齢者の方を中心に開催させていただきました。

約2時間の時間をいただきましたが、なかなか大変でした(汗)
講習やセミナーで活躍されている同職種の方は本当にすごいなと感じました。

分かり易く伝えることはもちろん、退屈しないように楽しい雰囲気を作ることなどまだまだ反省ばかりでした。

今回は「転倒予防教室」で使った内容をまとめたいと思います。


①転倒する場所

高齢者の場合、屋外よりも屋内での転倒が圧倒的に多くなります。

自宅で転倒した場所は庭が最も多く、次いで居間・茶の間・リビング、玄関・ホール・ポーチ、階段、寝室と続き、ここまでが全体の10%以上でした。

しかし自宅を大きく室内と庭に分けると、室内での転倒のほうが多くなります。とくに年代が上がるにつれ、室内での転倒の比率が高くなります。


②転倒の原因

よく、言われることは

筋力低下です。

リハビリ目標を聞いても、ケアマネが立てる目標にしても、「足腰の筋力を鍛えて、転倒しないようにする」と言った文言をたくさん見てきました。

確かに、筋力低下によって転倒のリスクは高くなりますし、高齢者の方は " 老化 " とともに筋力が落ちてくるのは非常に分かり易い流れです。

筋力低下が転倒リスクに非常に大きく影響しているでしょう。

しかし、筋力が少なそうな人でも安定して歩かれている人はいます。逆に筋力がありそうな人でもよく転んだりしています。

筋力低下転倒」とは言えそうですが、一概に、「転倒筋力低下」とは言い切れず、他の原因もあると思います。


その次に考えられることは

表在・深部感覚の低下です。

老化に伴って、感覚受容体の減少や感度の低下
また、皮膚の柔軟性低下や皮膚の肥厚により、さらに感度は低下します。

触れられている感覚(触覚)を感知するマイスナー小体は、手のひらや足の裏に多数存在しています。
若年者と比べると高齢者は70%も減少してしまいます。

足の裏からの情報は非常に重要で、私たちは靴の中に小石が入ると、違和感を感じて小石の存在に気付きます。靴を脱いで小石を取り除こうとひっくり返すと、思っていたよりも更に小さな小石が出てきた経験もあるかと思います。

そのくらい、足の裏からの情報は敏感に働いて、地面の状況などを伝えてくれています。

そのセンサーが若い頃と比べると30%しか働いていないのは、転倒のリスクに繋がります。

表在感覚といわれる、触覚・痛覚・圧覚・振動覚・温度覚とともに、
深部感覚である、運動覚・位置覚も低下しているため、立位・歩行は不安定となります。


感覚の部類に入りますが、視覚も非常に重要です。

高齢者になると、光の透過性は20%以下に落ちると言われており、暗い場所での視力障害が著明に現れます。

薄暗い部屋の中
夜、トイレに行こうと目覚めて歩く廊下・部屋の敷居

段差に気付きにくく、転倒リスクを高めます。


高齢者の場合、複数の疾患を治療中の方も多く、服薬状況も転倒に影響します。

血圧降下薬や睡眠導入剤、抗ヒスタミン剤、睡眠導入剤、抗精神病剤など
めまいやふらつき、脱力感、倦怠感などが副作用であります。

高齢者の場合、副作用が出易くなることも特徴ですので、服薬状況も確認し、医師に相談してください。


これまでの原因としてあげたものは、内的要因ですが、外的要因(環境)も転倒リスクを高めます。

屋内の段差や台所や洗面所のフロアカーペット、家電製品のコンセント、これからの時期だとコタツの敷布団や掛け布団は足を引っ掛けやすく転倒原因となります。

また、スリッパなども躓きやすくなります。


このように、筋力低下だけでなく、様々な原因が考えられます。
筋力だけが原因ではなく、複数の原因が影響しあって、転倒リスクを高めていると考えたほうが良いでしょう。

今回あげた原因の中には、すぐにでも解消してリスクを減らせる部分もあると思います。

次回は、予防を中心にまとめたいと思います。

個別機能訓練計画書の書き方

こんにちは

通所介護で機能訓練指導員をしていますSAKURAです。



今回は、個別機能訓練計画書の書き方についてまとめたいと思います。


先日、実地監査がありましたが、無事に終わりました。

個別機能訓練計画書についても、監査担当者からお褒めの言葉をいただきました。

市によって多少解釈が違ったりしますが、基本的なところを押えておけば問題ないと思います。

私の事業所で使用している書式は、厚生労働省が平成27年の改定・通達時に参考書式として出したものを、エクセルで打ち直して使用しています。



これを参考に使用していれば、監査の時に不備を指摘されることはないでしょう(笑)

この書式を使われている事業所は大丈夫ですが、レセプトの請求ソフトなどに入っている書式を使われたり、事業所独自で書式を作られたりしている方は、その書類に項目として抜けている部分が無いか比べて読んでもらうと良いかと思います。

今回、監査の担当者に聞いた情報を基に、必要な部分をまとめます。


①利用者情報
まずは利用者本人の情報ですが、この部分はケアマネからの情報提供書などで書くことが出来ると思います。
必要な項目は、「本人希望」と「家族希望」の部分です。

事前にアセスメントを行っていれば書ける部分ですが、ここが抜けている場合は別紙でアセスメントシートなどが個別機能訓練計画書の枚数分が必要になります。

厚労省の参考書式には利用者の住所がありません。ですので、計画書にいちいち住所を記載している事業所さんは省いて良いと思います。


②訓練目標

個別(Ⅰ)と(Ⅱ)の訓練目標は別けて書いてあります。
先日投稿した内容と重複しますが

個別機能訓練加算(Ⅰ)の目標は、身体機能面についてで構いません。
個別機能訓練加算(Ⅱ)の目標は、心身機能面、ADL・IADL、社会参加など多岐にわたります。

個別(Ⅰ)と(Ⅱ)の内容は密接していますが、同時に算定する場合は、別々の目標を立てなくてはなりません。

例えば、私が立てた計画の一つで、「買物に行きたいけど足元がフラフラで、怖くて億劫になっている。足を鍛えて買物を続けれるようにしたい」と本人希望があった利用者さんの目標を

個別(Ⅰ)長期:在宅生活を継続するために廃用症候群を予防する。
個別(Ⅰ)短期:定期的な訓練により、下肢筋力を維持・向上させる。
個別(Ⅱ)長期:転倒なく買物を行うことが出来る。
個別(Ⅱ)短期:買物をするため屋外歩行の安定化を図る。

としました。

③プログラム内容

こちらも、個別(Ⅰ)と(Ⅱ)を明確に別けて記載します。とくに

・内容が分かり易いか
・頻度(〇回/週)
・時間(〇分間)
・主な実施者

をきちんと記載しているか、監査担当者は確認していました。

私の事業所の監査を担当した職員さんは、あまりリハビリの知識が無いような方だったのもあるかもしれませんが、プログラム内容が単に”プラットホーム上の関節可動域訓練”と書いてあると詳しく聞かれました。
担当者「どんなことをしているんですか?」
わたし「プラットホームに仰向けで寝ていただいて、麻痺側の足が拘縮しないように曲げ伸ばしをしています。」
と口頭で説明し
わたし「この訓練内容の分かり易い表記の仕方がわかりません」
と伝えると
担当者「確かにね(笑い)」
と、和やかな雰囲気になったので助かりましたが、利用者さんや家族さんにも見て理解できるような内容じゃないとダメですよね(汗)

あとは、主な実施者ですが、当然個別(Ⅱ)の場合は、個別(Ⅱ)を算定するために配属された機能訓練指導員の名前を書いてください。
同時算定している場合、機能訓練指導員として配属されている職員が少なくとも2人以上いることと思いますが、個別(Ⅰ)を算定するために配属された機能訓練指導員(常勤専属)ではありませんよ


④署名欄

この部分は、自前で作った書式であっても抜けていることはないでしょう。
必ず、署名がされているか確認されますので

私の市では、本人の直筆なら印鑑は要らない。家族等の代筆なら印鑑が要る。
と言われました。
印鑑まで要るかどうかは、市によって異なると思いますので、確認してください。



今まで病院や施設でも監査を経験しましたが、慣れることは無いですね
いつもドキドキして不安になります。

加算を算定している以上、機能訓練指導員が責任持って計画書を作成しますので、監査で突っ込まれるのも機能訓練指導員です。
もし、事業所でお使いの書式に抜けている項目があったならば、機能訓練指導員が声を上げて書式を変更してください。
事業所が用意したものに記載しているだけだと、監査の時に大変なことになるかもしれません。

個別機能訓練加算ⅠとⅡの違い(訓練内容の違いなど)

こんにちは
通所介護で機能訓練指導員をしていますSAKURAです。

今回は、通所介護で加算として算定している「個別機能訓練加算」について整理したいと思います。

では、まず

個別機能訓練加算(Ⅰ)・・・46単位
個別機能訓練加算(Ⅱ)・・・56単位
と、単位数としてはなかなか大きな加算です。
平成27年の改正で、基本単位が減ったなか、これを算定しているか していないかでは、運営に大きく影響することと思います。

両方を同時算定している事業所も多いかと思いますが、利用者をはじめ 職員もその違いを分からずに提供しているところも多いように感じます。


 個別機能訓練加算Ⅰ個別機能訓練加算Ⅱ
機能訓練指導員の配置常勤専従 サービス提供時間を通して勤務し、機能訓練指導員のみに従事する者が1名必要非常勤でも可 機能訓練を実施する時間帯に勤務し、専ら機能訓練指導員に従事する者が1名必要
目的「身体機能」の維持・向上でもOK①身体機能だけでなく精神の働きも含む「心身機能」
②ADL・IADLといった生活行為全般である「活動」
③家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加」
 などの「生活機能」の維持・向上
訓練内容複数の種類の機能訓練の項目を準備し、心身の状況に応じた訓練を選択できるように選択を援助する実際の行動そのものや、それを模した行動を反復して行う。
段階的に目標の行動が出来るように内容を定める
実施範囲グループに別れて実施
(人数に関する記載なし)
5人程度以下の小集団
実施者機能訓練指導員などが実施機能訓練指導員が直接実施


個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いを分かりやすくまとめました。

気を付けていただきたいところは、「訓練目標」「訓練内容」「実施者」です。


〈訓練目標〉は、個別機能訓練加算Ⅰの場合は、身体機能に関することでも大丈夫です。

例えば

「下肢筋力の維持・向上」
「下肢の関節可動域の維持・向上」

でも、OKです。

個別機能訓練加算Ⅱの場合は、生活機能に関することになるので

「近くのスーパーまで買物に行けるようになる」
「洗濯物を洗って、干して、たたむ事ができる」

などになります。

体の部品(筋肉とか関節とか脳とか)の目標が個別機能訓練加算Ⅰ
体の部品を使っての活動目標が個別機能訓練加算Ⅱ

と考えたほうが分かりやすいでしょうか?

〈訓練内容〉は個別機能訓練加算Ⅰの場合は、何種類か用意した訓練

例えば
「ボール体操」
「ラジオ体操」
「マシントレーニング」
「塗り絵」

などの、体の部品にアプローチする訓練


個別機能訓練加算Ⅱの場合は

「椅子に座っての食器洗い」反復訓練
「買物に行くための歩行訓練」

などの、活動にアプローチする訓練


〈実施者〉は個別機能訓練加算Ⅰの場合は、機能訓練指導員などとなっていますので、介護職員でも生活相談員でもOKです。

個別機能訓練加算Ⅱの場合は、機能訓練指導員でなくてはなりません。


柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などが機能訓練指導員として配置してある事業所では、いわゆる「マッサージ」が機能訓練として提供しているところも多いと思います。

「マッサージ」は機能訓練にならない という解釈が多い(特にセラピストは)と思いますが、私は個別機能訓練加算ⅠであるならOKなのかな?と思います。

腰部の痛みにより歩くことが困難であれば、「患部の除痛・緩和」で歩行動作改善目的でのマッサージを提供することは、身体機能にアプローチしていますし。
でも、無資格者の「マッサージ」はダメだと思います。リスク高すぎですね(汗)

利用者それぞれに目標・目的があって、それを達成するための各々が訓練するのですが、
多くの事業所は訓練内容がすでに決まっていて、訓練内容に寄せる感じで目標・目的を設定するんじゃないかなぁ~

機能訓練指導員が、しっかりと利用者から情報を収集し、在宅生活を送る上で何が問題となっているかを評価して、それを改善できるようにどんな訓練を提供するか。 という一連の流れが基本です。

訓練内容がすでに決まっていても、ちゃんと前述の流れに沿って利用者に説明できるようにしてくださいね。


いろいろ書くと、他にも書きたいことがいっぱい出てきますが、またの機会にします(笑)

機能訓練指導員としてのリスク管理「アンダーソン・土肥の基準(変法)」

機能訓練指導員として、通所介護に務めている理学療法士ですが、一概に機能訓練指導員と言っても「資格」ではなく「職種」であるため、なかなか共通した意識や見解は難しいですよね(汗)


機能訓練指導員という職種で働くためには、国家資格である

「看護師」
「准看護師」
「理学療法士」
「作業療法士」
「言語聴覚士」
「柔道整復師」
「按摩マッサージ指圧師」

いずれかを取得していなければなりません。
機能訓練指導員として働くための試験はありません。

ですので、私の「理学療法士」を見てみても、
急性期でのリスク管理と、ターミナル・維持期でのリスク管理を比べても診ているポイントが違います。

一応のリハビリ中止基準はそれぞれにありますが、それに従うと何も出来ないことなんて多々ありますし、基準内であっても中止したほうが良いと判断出来る場面もあります。

センスのある人や、勘の良い人なら臨床の感覚で判断できますが、経験年数があったとしても見誤ることもあると思います。
(現に臨床経験年数では大先輩になる人でも、中止基準に達していないと言ってリハビリを継続し、顔色や呼吸数の変化に気付かず続けているような人もウヨウヨいました・・・あとで看護部から怒られていましたが・・・)


同じ職種でもリスク感覚がずれているのに、こんなに資格者が多いと どうしても共通の意識・見解は出ないとは思います。
特に、柔道整復師の方とお話させていただいた際に、『学校では、リスク管理について詳しく習っていない』と話されていました。(マジかこいつ!? って口には出さず心で思いました)

きちんと勉強されている方もいらっしゃると思いますが、現状はこのような状態で巷には「機能訓練特化型デイサービス」が横行しています。

前置きが長くなりましたが、デイサービスでのバイタルチェックとして毎回測るのが

「体温」
「脈拍」
「血圧」

ぐらいかと思います。

これらサインを基にリスク管理をする場合は、最低でも[アンダーソン・土肥の基準]を知っていたほうが良いと思います。

Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合

1)安静時脈拍数 120/分以上
2)拡張期血圧 120以上
3)収縮期血圧 200以上
4)労作性狭心症を現在有するもの
5)新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
6)うっ血性心不全の所見の明らかなもの
7)心房細動以外の著しい不整脈
8)運動前すでに動悸、息切れのあるもの


Ⅱ.途中で運動を中止する場合

1)運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
2)運動中、脈拍が140/分を越えた場合
3)運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
4)運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合


Ⅲ.次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する

1)脈拍数が運動時の30%を超えた場合.ただし,2分間の安静で10%以下に戻らぬ場合は、以後の運動は中止するかまたは極めて軽労作のものにきりかえる
2)脈拍数が120/分を越えた場合
3)1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
4)軽い動悸、息切れを訴えた場合



元々は、[アンダーソンの基準]を使っていたようですが、私が通った学校では[土肥変法]の方が臨床で使うことが多いと習いました。
実際の臨床でも[アンダーソンの基準土肥変法]が使われることが多かったです。

ただし、上にも記したとおり、これだけでリスク管理が万全と言うわけではありません。
それぞれの個人差がありますし、他にもリスクはたくさんありますが、デイサービスの機能訓練指導員として働かれている方で、「そんな基準は聞いたことない」ってなると事業所事態が疑われるレベルと思ってください。


この投稿を書きながら、改めて「恐ろしい業界にいるな」と感じます。